幻想郷を覆いつつある謎の妖霧。
その霧は夏の強烈な日差しから幻想郷を覆い隠し、中での弾幕ごっこを妨害する機能を持ち合わせていた。 博麗神社の巫女さん、博麗霊夢は日光を遮る妖霧をどうにかすべく、事態の解決に出かけ、変な鉄の妖怪の妨害を受けてほうほうの体で逃げてきた。 同じ頃、魔法使いの霧雨魔理沙は、霧の発生源と思しき湖の島へ様子を見に行き、霊夢と同じく変な鉄の妖怪の妨害に遭って引き上げてきた。 鉄の妖怪への対抗手段を求めてやってきた古道具屋、香霖堂で二人は店主の森近霖之助から対抗手段の「鉄で出来た式みたいなもの」『博麗』、『霧雨』の二機を受け取り、再び事態の解決に乗り出した。 神社の境内裏でルーミアの『宵闇』と、湖の外周部上空でチルノの『氷雨』と二人は交戦、撃破。 二人は湖の島を目指してさらに進む。 だが、その二人に、紅魔館門番部隊が襲い掛かる……。 以上、前回までのあらすじ。 チルノの操る『氷雨』を撃墜して数分。霊夢の『博麗』と魔理沙の『霧雨』の二機は広大な湖の外周部から内周部に到達した。 コンソールが警告音を鳴らす。 『未確認機多数接近』 遠方から二人の視界にちらほらと豆粒程度の人型が写り出す。 機体が自動で望遠を行い、敵機を拡大する。 敵はどれも青と白で構成された同じ形状の機体だ。量産機だろうか。手にはライフル、マシンガン、バズーカなどを装備している。シールドはない。 「敵さんだぜ。しかも……」 「一機二機じゃないわね。百機ぐらい?」 「流石にそこまではいないだろ。私の見たところ五十機ってところだな」 「殆ど同じじゃない」 「倍違うぜ」 「こう言うでしょ。五十歩百歩」 「それは何か違う」 二人が軽口を叩いている間にどんどん無数の機影は大きくなり、そして散発的にチカチカと光を発した。 「撃ってきた!」 二機の周囲を弾が飛んでいく。二人は当たりそうな弾にだけ回避行動を取った。 こういう場合、下手に動いた方がかえって危ない。弾幕ごっこのセオリーだ。 「さて、お返しだな」 魔理沙の操作に従って『霧雨』はレーザーライフルを構え、適当に密集しているところを狙って撃った。 白い光が走り、射線上の機体をまとめて撃墜する。 「進路はこっちで間違いないみたいだし。突破させてもらいましょうか。さっきは見てるだけで暇だったし」 ニードルマシンガンを構え、機体速度を上げて単騎突撃を敢行する『博麗』。 「あ、待てよ霊夢!」 レーザーライフルをミニミサイルマシンガンに持ち替える『霧雨』を置いて、『博麗』は敵群に突っ込んだ。 ☆ コンソールが激しく警告音を鳴らし、複数からロックオンされていることを霊夢に慌しく知らせる。 ロックオンだけに留まらず、既に『博麗』は火線に晒されている。 当の霊夢は平然とした顔だ。 無数の火線を全て見切っているかのようにかわして敵陣へ突っ込んでいく。 ひらひらと蝶の様に舞い、お返しで緋蜂の様に無数のニードルを敵機に刺し穿つ。 止まって射撃を加えていた三機がニードルを浴びて撃墜される。 「止まるな! 動いて攻撃しろ!」 敵機の誰かが叫ぶ。 止まっていては的だ。動かない標的より動いている標的の方が狙い難い。 青い機体達がにわかに機動を開始する。 だが、的にならないために取った機動で今度は同士討ちを警戒して組んでいた陣形が乱れた。 さらに『博麗』の戦い方は酷く誤射を誘うものだった。 敵群の隙間を牽制射を加えながら潜り抜け、後方からの敵弾をひらひらかわして前方の敵機に命中させる。 誤射を恐れて後方からの銃撃が止めば、 「ホーミングミサイル! ばら撒け!」 『博麗』のバックパックからホーミングミサイルが乱れ飛び、後方の敵機を撃墜する。 「まとまるな、散開しろ!」 散開すれば味方への誤射を気にする必要が減る、と誰かが叫ぶ。 今度は散開して『博麗』との距離が離れた機体が次々に撃ち落されていく。 「霊夢と近いんじゃ撃てないがな、離れてくれれば撃ち放題だぜ」 ばらららん、と三点バーストでミニミサイルマシンガンを叩き込んでいく魔理沙。 敵機の中には散開しつつ『霧雨』に攻撃を加えようとする者も居たが、逆も然り。そういう者は迅速に『博麗』に落とされた。 破れかぶれで『博麗』に接近戦を挑む者も出てきた。引けば撃たれる。ならいっそ、というわけだ。 単分子ブレードを抜き放って切りかかってくる敵機を、『博麗』はニードルマシンガンで容赦なくハリネズミに変えた。 二機以上で同時攻撃をかけてくる相手には逃げながらホーミングミサイルを合わせる。 『博麗』と『霧雨』の戦法とコンビネーションは紅魔館守備遊撃隊のそれを上回っていた。 二十倍以上の戦力差を持ちながらも遊撃隊は次々に落とされていく。 圧倒的な強さを見せつける二機。 しかし、 「霊夢! 東から機影三つか五つ!」 「こっちも西から機影七つ!」 次から次にやってくる増援。 遊撃隊に遅れて湖各所から巡回隊がやってきたのだ。 一隊一隊は二人にとって大した脅威ではないのだが、四方八方から集られると数の暴力が効いてくる。 正面からくる十より、包囲しての八の方が厄介ということだ。 「キリがないわね。霖之助さん、何か一掃できるような装備はないのかしら?」 ややあって霖之助からの返答が返ってきた。 「『夢想封印』と『封魔陣』の二種類がある。『夢想封印』は君の使うものとほぼ同一だと思っていい。『封魔陣』は有効範囲内の機体に機能障害を与え、短時間スタンさせる装備だ。どちらも強力だが……」 「強力だが?」 「『夢想封印』は三発しか積んでない。『封魔陣』は使うとしばらく機体のパワーが落ちる。世の中便利な物には裏があるということだね」 したり顔で話す霖之助の姿が目に浮かぶようだった。 「じゃ『封魔陣』にしよっと。『博麗』! 『封魔陣』!」 霊夢のコマンドワードを認識して『博麗』が目を煌かせた。 『博麗』は両腕を正面でクロスさせ、一息で左右に大きく開いた。『博麗』を中心に八方へ格子状の青い光が広がっていく。 光に触れた機体は次々にスパークを散らして動きを止めていった。 『霧雨』一機を除いて。 青い光は次第に薄くなり、消えた。同時に『博麗』のコンソールがパワーダウンの注意を表示する。 「魔理沙、今!」 「言われなくたって!」 パワーダウンも『敵』から一転して『的』に変わった機体を撃ち落していく分には関係ない。 「装備、スプレッド!」 右手のニードルマシンガンを左手に投げ渡して『博麗』は右手でスプレッドガンを抜いた。巧みなガン捌きで瞬く間に複数の目標を撃墜する。 スタンしてまともに動くことのできない的を二人は次々に撃ち落していく。 『封魔陣』の使用から五秒が経過する頃には『的』から『敵』になれるものはいなくなっていた。 ☆ 湖に浮かぶ島に紅いお屋敷がそびえ立っていた。 お屋敷はその名を『紅魔館』という。 「遊撃隊、また一機やられました。押されています」 その紅魔館外壁周辺に建てられた門番詰所。そこに間に合わせで設けられた指揮所で通信係の隊員がコンソールを前に報告する。 「巡回隊は? まだ到着しないの?」 すらりとした長い脚を組み、きゅっと引き締まった臀部を椅子にのせて、鈴のような声で問う。 「もうしばらくです」 「やれやれ。まだ練度がいまひとつかしら」 強力に自己主張する8Xセンチ砲二門を揺らし、ストレートの紅いロングヘアを背中に流して、紅魔館門番隊の隊長を務める美しき人妖『紅美鈴』は静かに言った。 「巡回隊の第一陣が到着しました。あ、第二、第三も到着っ!?」 コンソールのフリップが次々に消えていく。 「そんな……こんなことって……巡回隊、ほぼ壊滅状態です!」 涙混じりの声で状況を報告する通信係。 「壊滅って……出撃命令出してから十五分よ!? 接敵まで五分ぐらいとして、十分!? 壊滅!? 十分もたずに!?」 驚きと信じられないといった感情の混ざった声を上げる美鈴。 「嘘でしょう……」 「本当です……。通信、答えません……」 「嘘……」 門番隊を統括する立場の妖怪として、遊撃隊と巡回隊に充分な訓練を課して確かな練度を培わせていた。 客観的に見ても充分な力を持たせたと実感していたのだ。 ――だが壊滅した。 ぎゅ、と美鈴は手を握り締めた。 「……『ゲートキーパーズ』の出撃準備はできてる?」 「まだです。あと五分は……」 「遅いッ! 次があったら改善するわよ!」 言って美鈴は立ち上がった。指揮所の外へ足を運ぶ。 「私が時間を稼ぐ。……私にも隊長としての面子があるのよ」 それに……、と美鈴は続ける。 「部下の仇は、上司が取らないとね」 ☆ 迎撃に出てきた敵機を全て撃ち落し、『博麗』と『霧雨』は一息ついた。 そして、「じゃ行きましょうか」と、湖の中心に向かって再び進路を取った。 ちりん。 「……なに?」 「どうかしたか、霊夢?」 「今、何か聞こえなかった?」 「ん……?」 言われて魔理沙は耳をすませた。機体の飛行音以外は何も聞こえない。 「空耳じゃないのか?」 「にしてはハッキリ聞こえたわ」 「私には聞こえなかったぜ」 「耳掃除が甘いんじゃないの」 「じゃ帰ったら膝枕でやってくれ」 「なんで私がやらなきゃなら」 ちりん。 「……聞こえた?」 「……ああ」 二人は動きを止め、ゆっくり相互の距離を詰めた。 「どこからだ?」 「わからない」 周囲を見回す『博麗』と『霧雨』。 ちりん。 『博麗』と『霧雨』のコンソールが同時にアラートを鳴らした。 『接近警報。正面に未確認機1』 ☆ 「見せてもらいましょうか。侵入者さんの機体の性能とやらを!」 緑と赤で構成された均整の取れたフォルムの機体が鈴の音を伴って、急激に『博麗』と『霧雨』に接近してきた。 両手にはそれぞれアサルトライフルが携えられている。 紅魔館門番隊隊長『紅美鈴』が搭乗機『華人小娘』だ。 『華人小娘』は左手で『博麗』を、右手で『霧雨』を照準し、フルオート射撃。 威力バッチリの弾丸が『博麗』と『霧雨』を捉えた。 光の尾を引く曳光弾混じりの弾雨が、ばたばたばたと二機を叩く。 「きゃあっ」 「うわあっ」 着弾の衝撃が機体を揺らし、弾ける弾体が弾着の煙を上げる。 弾着の煙が晴れると、それには無傷の二機。 「いきなり!」 「なにすんだ!」 予期せぬニードルガンとミニミサイルマシンガンの反撃を受け、美鈴は大慌てで回避機動を取った。 「馬鹿な!? 直撃のはずなのに! ……それならッ!」 スラスターを噴かして直進。『博麗』と『霧雨』の攻撃を掻い潜り、フェイントをかけて手前で急降下。真下に潜り込み、瞬間的に上昇した。 『博麗』と『霧雨』はその急激な機動に対応しきれない。銃口を真下に向けた瞬間には目の前に敵機が居た。 『華人小娘』は上昇の勢いを乗せた蹴りを『博麗』にぶち込んだ。さらに機体を縦に回転させて、逆足のカカトを『博麗』の後ろ肩に浴びせる。 湖面に向かって吹っ飛ばされる『博麗』。霊夢が機体を引き起こす前に湖が彼女を歓迎した。盛大に上がる水柱。 「霊夢!」 『霧雨』がミニミサイルマシンガンを撃とうとするが『華人小娘』のアサルトライフルの方が早い。 近距離からの発砲に頭部を庇う『霧雨』。 左手のアサルトライフルで『霧雨』を固めながら『華人小娘』は距離を詰め、右手の銃身でガードをこじ開けた。 右手を開いてアサルトライフルを手離し、驚異的な速さで『霧雨』の中央に掌底を叩き込んだ。 身体をくの字に折って吹き飛ぶ『霧雨』。 『華人小娘』はアサルトライフルが重力を思い出す前にキャッチして、『霧雨』を追う。 「と、止まれ!」 魔理沙の懸命な操縦により『霧雨』が体勢を立て直す。 止まった『霧雨』が顔を上げる。そこには美鈴の駆る『華人小娘』。 「あ」 「っせい!」 無防備な『霧雨』を『華人小娘』は回って遠心力を乗せたまわし蹴りでさらに蹴り飛ばした。 「うわぁぁーー!」 操縦者の悲鳴の尾を引いて飛んでいく『霧雨』から、湖面へ蹴り落とした『博麗』に美鈴は意識を振り分けた。 湖面を破り、水しぶきを上げて『博麗』が上昇してくる。 それを見て美鈴は舌打ちした。 「あれでもダメか。どんな装甲してるのよ」 上昇、接近しながら『博麗』がニードルマシンガンを撃つ。 美鈴は巧みに射線上から機体を外し、アサルトライフルを撃ち返す。 霊夢も同様に飛来する弾雨から機体をかわし、さらにホーミングミサイルを数発放った。 「ふっ……!」 アサルトライフルの照準を霊夢からホーミングミサイルに変更する美鈴。 発砲。瞬く間に撃ち落されるホーミングミサイル群。 ターゲットをロックして最短距離を突き進むホーミングミサイルを撃ち落すことなど、美鈴には造作もなかった。 「嘘っ!?」 「そんなバレバレな攻撃が私に通用すると思ってんの!」 迎撃主体の機動を攻撃主体に切り替え、『博麗』に迫る『華人小娘』。 「こいつ……。違うわ。他のヤツとは。装甲も、パワーも!」 「こちとら伊達に隊長やってないのよ!」 アサルトライフルで牽制射を加えながら『華人小娘』は本命射の腕部グレネードランチャーを放った。 『博麗』の至近で爆発。衝撃と破片と熱風が『博麗』を炙り、煙幕が視界を塞ぐ。 「くっ……どこから来る?」 身を固めて視界を巡らせ『華人小娘』の奇襲に備える『博麗』。 美鈴は電光石火の強襲を選んだ。左のアサルトライフルを背部ラッチにマウントして最短距離で突っ込む。 美鈴のカンと読み通りの位置に『博麗』は居た。猛然とアサルトライフルのストックで殴りかかる。 カチ上げ、振り下ろし突き、タメを作って薙ぎ払い。 「ああっ!? っこんのぉ!」 仰け反るも体勢を立て直しつつニードルマシンガンを向けようとする『博麗』。 させじと『華人小娘』は詰めてニードルマシンガンを払い、ボディにストックを叩き込んだ。 たまらず『博麗』はスラスターを噴かして離脱を計った。 「これだけやってびくともしないなんて何なのよあいつ! 化け物!?」 驚きの声を上げて、美鈴は霊夢を追った。 「パワーダウンがこんな形で響いてくるなんて……」 さっきの『封魔陣』の影響がまだ機体に残っていた。スピードが上がらない。このままでは追いつかれてまたド突きまわされるかもしれない。 「霊夢、そのまま真っ直ぐだ」 「魔理沙?」 唐突に魔理沙から通信が入った。 「あいつに一発かましてやる。そのまま真っ直ぐだ」 「わかったわ。もっとも……逃げ切れればだけど」 ちら、と霊夢は背後を窺った。 姿は見えない。だが、プレッシャーは確実についてきている。 「ああもう! いつまでパワーダウン中なのよ『博麗』!」 コンソールは無情に『パワーダウン中』の表示をするだけだった。 『霧雨』はレーザーライフルをゆっくりと、丁寧に構えた。銃口は立ち込める煙幕の中を駆ける『博麗』に向けられている。 『華人小娘』の位置は分からないが、『博麗』の位置は『霧雨』のセンサーがシグナルを探知して明確に捉えている。 『博麗』が煙から飛び出せば『華人小娘』も追ってくる。 魔理沙はそう踏んでいた。 「霊夢、煙から飛び出したら急上昇しろ。もたもたしてると諸とも撃っちゃうぜ」 通信回線の向うで霊夢が喚いた様だったが魔理沙は気にしなかった。 なんのかんの言いつつ霊夢ならかわすと魔理沙は踏んでいた。 あとは自分が当てられるかどうかだ。 「……当てるぜ」 不敵に言って魔理沙は照準に集中した。 ☆ 『博麗』は頑張った。『華人小娘』に追いつかれる前に煙幕から脱したのだ。 「上昇しろ!」 煙幕から脱した『博麗』に魔理沙が怒鳴った。 わかってると言わんばかりに『博麗』は急上昇。射界が開ける。 「来る……!」 煙幕から脱した『博麗』を追って『華人小娘』も煙幕の外に出た。 『博麗』の姿がない。 正面にはレーザーライフルを構えた『霧雨』の姿。 『華人小娘』を狙ってレーザーが走った。 美鈴は反射的に乗機の右手のアサルトライフルを射線に割り込ませた。 瞬時に赤熱化する銃身を手離し、シールドで身を庇いながら右下方に飛び退く。 次の瞬間、アサルトライフルが爆発した。 「っ……! やってくれる!」 損傷軽微。戦闘可能。 背部ラッチに残ったもう一丁のアサルトライフルに手を伸ばす『華人小娘』。 その直上からニードルが降り注いだ。上昇した『博麗』の逆襲だ。 「真上!?」 被弾しながらも『華人小娘』はシールドをかざした。 だが遅かったとも言える。 ニードルは背後ラッチの一部を穿ち、削り、アサルトライフルの固定を破壊。 美鈴が気付いた時には、アサルトライフルは既に手の届かないところまで落下していた。 「魔理沙!」 霊夢が怒鳴る。 レーザーライフルをミニミサイルマシンガンに持ち替えた『霧雨』が、針の雨に釘付けにされた『華人小娘』に照準を合わせる。 「しまった!」 『華人小娘』のコンソールがロックオンアラートを鳴らす。だが動き様が無い。 美鈴の身体から血の気が引く。 「もらったぜ」 トリガーが絞られる直前、『霧雨』の背中にいずこからか飛来した徹甲炸弾が命中した。 表面装甲を貫き、第一装甲を穿って炸裂。 着弾の衝撃と爆発に『霧雨』が傾ぐ。 「くっ……なんだ!?」 予期せぬ事態にその場の三機全てが銃弾の飛来した方向へ意識をやる。 そこには、 「お待たせしました隊長」 先の量産機とは色違いの赤と白の機体が六機。左腕部にはシールド。右手にはアサルトライフルを筆頭とする火器を所持している。 「危ないところでしたね。貸し一つですよ」 長大な銃身の狙撃砲を持った機体が言った。銃口から硝煙が立ち昇っている。『霧雨』の背中に銃弾を撃ち込んだのはこの機体らしい。 「ゲートキーパーズ、全機参上しました。これより支援に入ります」 頭部形状の異なる指揮官機らしき機体が言い、アサルトライフルを構えた。照準は『霧雨』。 「キーパー5と6は紅白を狙え! 牽制射でいい、隊長から切り離せ! 残りは黒白だ!」 返事代わりに一斉に銃器を構えるゲートキーパーズ。 「撃てーーっ!!」 組織だった射撃が『博麗』と『霧雨』を襲った。 ☆ 迫り来る銃火に『霧雨』は『華人小娘』への攻撃を中断せざるを得なかった。 魔理沙はゲートキーパーズ側にシールドを向け、目一杯に急上昇をかける。 「くそっ、なんだってんだ! 『霧雨』、ダメージは!?」 コンソールが情報を表示する。 『表面装甲貫通。第一装甲損傷軽微』 「つまりどういうことだよわかんねえよ!」 三点バーストでミニミサイルを撃ち返しながら回避機動を取る『霧雨』。 「キーパー5、キーパー6は紅白への牽制射を続けろ。他は黒白を取り囲め。包囲攻撃で殲滅するぞ!」 言って指揮官機のキーパー2は『霧雨』を追った。 「了解!」と一つ返事でキーパー3、キーパー4、キーパー7が『霧雨』を包囲すべく機動する。 「くっ……。こいつは、ちょっとやばいぜ」 機体を掠める銃撃に魔理沙は漏らした。 狙撃銃から放たれる高速弾が『博麗』に襲い掛かり、 「うわっと」 シールドで防がれた。 「このまま畳み掛けるぞ。あの紅白を動かすな」 キーパー6がキーパー5に言い、セミオートの狙撃銃による狙撃を交互に行う。 「隊長! 今のうちに離脱を!」 「しないわよ」 『華人小娘』は左腕とシールドの間から反りの入ったブレードを引き抜いた。 「キーパー5、6、あと三秒牽制射を続けろ」 右手の指でブレードを旋回させて、しっかりと握り締める。黒色の刀身が熱を帯び、発光を始める。 「キーパー1より全ユニットへ。紅白は私がやる。残りは黒白に掛かれ」 指示を残して美鈴はシールドを構えたまま『博麗』に挑みかかった。 狙撃をシールドで防ぎながら『博麗』は迫る『華人小娘』にニードルマシンガンを撃つ。 だが、シールドに阻まれて『華人小娘』本体に届かない。 撃ち込みが足りないと言わんばかりに。『博麗』は狂ったようにニードルマシンガンを撃ち続ける。 ニードルが刺さり、衝撃で凹み、シールドが『盾』としての機能を失っていく。 「(間に合わない!)」 牽制狙撃が止む。 『華人小娘』の左腕が『博麗』のニードルマシンガンを払う。 「っ!」 「き、エエェッ!!」 ヒートブレードが『博麗』に振り下ろされる。 「くぬっ!!」 霊夢は咄嗟にシールドを割り込ませて刃を防いだ。シールドに一文字の刀傷が刻まれる。 「こうなったら背水の陣よ!」 『華人小娘』はヒートブレードを逆手に持ち替えた。即座に振り下ろす。 刹那、『博麗』は『華人小娘』との間に膝を割り込ませて蹴り剥がした。『華人小娘』がたたらを踏む。 「あんた一人で陣なのかっ!?」 距離が開いたところでニードルマシンガンを向ける『博麗』。 引き金を引くより早く、その右腕にワイヤーが絡みついた。 「逃がすか!」 ワイヤーは突き出された『華人小娘』の左手首から伸びていた。 突き出した左腕とワイヤーが引かれ、引き寄せられる『博麗』。 その首を狙って、『華人小娘』は横一文字にヒートブレードを振るい、 異様な音がした。 「何!?」 『博麗』の首を斬り飛ばさんと振るわれたヒートブレードは、『博麗』の近接兵装によって防がれた。 ――ビームお払い棒。 『博麗』に搭載された近接格闘兵装である。 「く、の……っ、相手の土俵で勝負するしかないみたいね」 未だにパワーダウン中の『博麗』で霊夢は格闘戦に踏み切る覚悟を決めた。 ☆ 高機動の優位を活かして巧みに包囲から逃れ続けていた『霧雨』だったが、状況が変わった。 合流してきたキーパー5、キーパー6による狙撃支援によって。 二機は『霧雨』の鼻先に炸裂弾を送り込み、動きを牽制。 速度を落とした『霧雨』をキーパー7のショットガンが捉えた。 銃声と共に小粒散弾の暴風が『霧雨』を襲った。 「のあっ!」 浮遊機雷の爆発にすら耐えた装甲は小粒散弾程度ではびくともしない。 装甲はびくともしないが巨大ハンマーで殴りつけられたかのような衝撃は機体と中の操縦者を揺さぶる。 『さすが魔理沙だ、なんともないぜ』とは行かないのである。 「く、ぅ!」 衝撃に動きが止まる『霧雨』と魔理沙。 そしてそこに殺到するゲートキーパーズ。 「集中砲火! ヤツを釘付けにしろ!」 隙を逃さないキーパー2の指揮の元、『霧雨』に四方八方から銃火が叩き込まれた。 動きを止めた『霧雨』正面に回りこんだキーパー7がショットガンを。 キーパー3とキーパー4が右からアサルトライフルを。 キーパー2が背後からさらにアサルトライフルを。 キーパー5、キーパー6が大口径徹甲炸弾を装填した狙撃砲を。 それぞれが『霧雨』の装甲を叩いて火花を散らす。 唯一『霧雨』の装甲を貫きうる狙撃砲との射線上にシールドが存在することが幸いして、未だに『霧雨』は其処にあった。 だがこれでは身動きが取れない。 どんな装甲も無限ではない。このままではいずれ『霧雨』は破壊される。 「くそっ! 香霖、何かないか!?」 「ふむ。こんなこともあろうかと……」 霖之助は静かな声で返事した。 「あろうかと!? もったいぶらないで早く言え!」 「君のスペルを模した装備を搭載しておいた。『スターダストレヴァリエ』だ。仕様も君の物とほぼ同一だよ。ただし……」 「ただし? なんだよ! さっさと言え!」 集中砲火で被弾しまくっている魔理沙。焦りが募るのも無理は無い。 「『封魔陣』の様にエネルギーを消耗する。しばらく機体出力が低下してしまうからそこは注意しなければいけない。それから」 「まだあるのか!?」 「その位置だと狙撃してくる敵機に届かない。どうにかして接近しないとダメだな。動きが鈍ったところに直撃をもらって落とされては目も当てられない」 冷静に言う霖之助。 「でぇいくそ! この状況でどうやって接近しろっていうんだ!」 「まずは落ち着くんだ魔理沙。そして状況を見据えて一瞬の隙をつく。大丈夫だ。君と『霧雨』ならできる」 「香霖……」 霖之助の言葉を染み入らせるような時間を置いて、魔理沙は不敵に笑った。 「やってやるぜ。私は霧雨魔理沙だ」 ☆ 「こんのぉぉ!」 霊夢の気合と共に、ビームの紙垂(かみしで)が光の粒子を散らす。 『博麗』はニードルマシンガンを背中の武装ラッチに戻し、右手でビームお払い棒を振るっていた。 格闘戦では長い銃身のニードルマシンガンは邪魔になるとの判断からだ。 美鈴操る『華人小娘』はその非常識な武装――ビームお払い棒を、ときにかわし、ときに右手のヒートブレードで払って、捌いていた。 格闘戦に移行してから『華人小娘』は一撃も喰らっていなかった。 逆に『博麗』は傷ついていた。上体の様々な箇所に損傷が見られる。どれも損傷の程度で言えば浅い。表面装甲を焼き裂いた程度だ。人間で言えばかすり傷だ。 問題は『博麗』がこれだけ攻撃を受けた、ということだろう。 飄々と弾雨を掻い潜り、風に吹かれる柳の様に攻撃をかわし続けてきた『博麗』が。 「反応はいい。動きも悪くない。機体性能はこっちを上回ってる。だけど……」 ヒートブレードを両手で構え、斬りかかる『華人小娘』。 それをビームお払い棒で真っ向から受け止める『博麗』。 「経験が足りない」 美鈴は押し込むと見せかけて、一瞬力を緩めた。 「あっ!」 『博麗』は押し返そうとした力の分、機体が前に流れる。 そこをうまく引っ掛けて、ビームお払い棒を払う。 がら空きになった『博麗』のボディに『華人小娘』の前蹴りがめり込んだ。 「くっ……!」 前蹴りを受け、人体を模した構造上くの字に曲がる『博麗』。 そこへビームお払い棒を払った返す刀による刺突が迫る。 『博麗』はシールドで刀身を叩いて軌道を逸らし、間一髪でかわした。大急ぎで間合いを取り、刺突から派生する薙ぎ払いから逃れる。 格闘戦に移行してからこんな調子で、『博麗』はじりじりと追い詰められていた。 ここまでの戦いで美鈴はあることに気がついていた。 紅白に白黒、どちらも素質はあるが如何せん経験が足りない。 特に格闘戦と連携を取る相手との戦闘経験が足りない。 そして今、二機を分断して経験不足を突いて叩いている。 「……勝ったわね」 自信たっぷり笑み交じりに言い、美鈴は愛機を構えさせた。 さて、あと何合あの紅白は生き残れるか? ☆ 「うおおおおおっ!!」 魔理沙は着弾の衝撃を気合で噛み殺し、揺さぶられながら『霧雨』を動かす。 ポンプアクションショットガンの隙を突いてキーパー7にミニミサイルマシンガンで反撃。シールドで防御されるも、それは計算のうち。 『霧雨』はキーパー7の視界をシールドが塞いだ隙にスラスターを噴かして急接近。そのままキックを叩き込んだ。姿勢を崩すキーパー7。 「状況を見据えて一瞬の隙をついたぜ」 キックの反動で『霧雨』は逆進。 右にミニミサイルマシンガンを向けて、逆進しながらキーパー3、キーパー4を銃撃。シールドで防御されても構わず撃ち続ける。 そして、アサルトライフルを撃ち続けるキーパー2に背中からぶつかって強引に黙らせた。 「さすが『霧雨』だ。至近距離から喰らってもなんともないぜ」 『霧雨』は肩越しにミニミサイルマシンガンを背後に向けた。後ろ抱き状態に近いこの体勢、かわしようがない。 三点バーストで放たれたミニミサイルを頭部に受け、キーパー2が落ちた。 「副長!」 うろたえる残りのゲートキーパーズ。 『霧雨』はキーパー3、キーパー4、キーパー7にミニミサイルをばら撒いてジグザグ機動を取りながらキーパー5とキーパー6に向かった。 「やらせるか!」 異口同音に言って、『霧雨』を迎撃もしくは追撃する残りのゲートキーパーズ。 ジグザグ機動で照準を撹乱しつつ、速度を抑えて狙撃班に接近する『霧雨』。 追いすがるキーパー3、キーパー4、キーパー7。 狙撃砲をかわしながら『霧雨』は距離を詰め、そして到達した。 『全敵ユニット『スターダストレヴァリエ』有効射程内に捕捉』 「『霧雨』、『スターダストレヴァリエ』!」 コマンドワードを認識して『霧雨』が光を放った。 光は『霧雨』に迫っていた敵弾を全て打ち消し、星型のフィールドをいくつか形成。 『霧雨』を中心に八方へ煌びやかな星屑の幻想が散っていく。 突如として現われた物理的な威力を持つ星屑に、ゲートキーパーズは一機残らず打ちのめされた。 回避は間に合わず、防御は諸共に貫かれた。 全機戦闘不能。 『霧雨』と交戦していたゲートキーパーズは全て湖に落ちていった。 『『スターダストレヴァリエ』の使用により25%のパワーダウン。回復には180秒を要する』 『霧雨』のコンソールがインフォメーションメッセージを表示する。 魔理沙は浅く息を吸い、深く、肺の空気全てを吐くかのように深呼吸をした。 「今回はちょっとやばかったな。助かったぜ香霖」 「どういたしまして。と、それより霊夢の方はいいのかい?」 「はっはっはー。私と魅魔様以外が霊夢を倒すところなんて想像できないぜ」 「なるほどね」 ☆ 美鈴は思い違いをしていた。 霊夢は格闘戦の経験が足りない。ならその経験不足を突けば勝てる。そう思っていた。 読み違いと言ってもいい。 霊夢は格闘戦を得意とする美鈴との戦闘で、飛躍的に経験を積みつつあった。 元々余りある天性のセンスの持ち主だ。コツを飲み込んでいくのも早い。 何合目かの打ち合いで、『華人小娘』は初めて一撃を受けた。 ビームお払い棒の刺突をヒートブレードで払い、シールドでの殴りかかりを返す腕で払ったところで、 「あごっ!?」 サマーソルトで顎をカチ上げられた。 頭突きあたりのパチキは予想していたが、流石にこれは思いつかなかった。 ぐらりと仰け反るもなんとか堪える『華人小娘』。 追い撃ちとばかりにビームお払い棒を振り下ろす『博麗』。 『華人小娘』はヒートブレードで受けた。 「えやあぁっ!」 『博麗』は強引にビームお払い棒を振り抜いた。 状態的に踏ん張りの利かなかった『華人小娘』の装甲をビームが舐める。緑の装甲が赤熱、融解した。 「浅いよッ!」 『華人小娘』は『博麗』が手首を返す前に左の掌底で殴り飛ばした。 ビームお払い棒を振り抜いた勢いと同じ方向で加えられた衝撃に流れ飛ぶ『博麗』。 横方向にきっかり二回転で『博麗』は止まって構えた。 ダメージを受けた部分を庇うように『華人小娘』も構える。 仕掛けるには遠く、飛び道具に切り替えるには近すぎる距離。 (まずい。何時の間にか素人じゃなくなってる) 美鈴はしくじった。 『経験が足りない』 こう評した霊夢に”経験を積ませて”しまったのだ。 格闘戦に長けた美鈴と一対一のギリギリの戦いを繰り広げ、霊夢は美鈴を仕留め得るレベルまで成長した。 「こりゃまずいわね。……下手するとやられる」 美鈴は汗ばんだ手を開き、握りなおした。 そして、どう攻めるか『博麗』を窺う。 『博麗』は動かない。こちらも機を窺っているのか。 まばゆい光が辺りを照らした。『スターダストレヴァリエ』の光だ。 どちらも動かない。お互いに集中している。 『キーパー2以下六機の信号消失』 『華人小娘』のコンソールが美鈴以外のゲートキーパーズ六機全てが落とされたことを知らせた。 美鈴は表示を認識して、その意味を理解して、 「な……嘘でしょ!?」 目を見開いて叫んだ。 「今! もらったぁ!」 霊夢は動揺する美鈴を見たわけではない。 『華人小娘』の外面も微動だにしていない。 カンが今だと告げたのだ。 『博麗』は『華人小娘』に急接近。頭部目掛けてビームお払い棒を突き出した。 「くっ!」 一瞬反応が遅れ、美鈴は回避ではなく防御動作を取った。左腕をビームお払い棒の軌道に割り込ませる。 ビームお払い棒は半壊していたシールドを貫通。 さらに『華人小娘』の左腕に食い込んで、貫いた。頭部目掛けてビームの紙垂が翻る。 頭部に迫ったビームお払い棒は間一髪でヒートブレードに止められた。シールドを貫かれた段階で美鈴がヒートブレードを割り込ませたのだ。 ビームの紙垂が赤熱化した刀身と競り合い、スパークを散らす。 「……っ、惜しかったわね。 もう少しで私を倒」 「惜しくなんかないわよ」 「え?」 『華人小娘』は視界を塞がれ両腕は自由を失っている。 そして、『博麗』には左腕がまだ残っている。 「お払い棒二本で!」 『博麗』が左腕を振り下ろす。左手に握られていた物が伸びて棒状を成す。キィンと金属の噛み合う音。 「攻撃力……」 棒の先が、光の紙垂を下げる。 「二倍ッ!!」 二本目のビームお払い棒が『華人小娘』の右胸部を突いた。 火花が散り、装甲を削り穿つ。 ――――貫いた! パシパチパシ、と機体各所からスパークが散り、 「くぅ……! ……済みませんお嬢様!!」 『華人小娘』は機能を停止した。 ☆ 『博麗』は機能停止した『華人小娘』を抱えて『霧雨』と合流した。 「無事だったみたいね」 「お互いにな。で、そいつはなんだ」 そいつ、と『華人小娘』を指差す『霧雨』。 「そんなもん抱えてて大丈夫なのか?」 「パワーダウンならさっき回復したわ。大丈夫」 「で、どうするんだそれ」 「ふふん。……さぁて。道案内してもらうわよ」 「嫌よ」 ぶすっと美鈴は言った。 「あぁん、どういうことだ?」 「アンタら私の機体ぶっ壊したり部下を全滅させたりしたじゃない! 道案内なんてするわけないでしょう!」 顔を見合わせる霊夢(博麗)と魔理沙(霧雨)。 「それもそうね」 「それもそうだな」 しみじみという主人公二人。 「……あんたらどういう教育受けたのよ」 疲れた声で美鈴。 「じゃ……」 「捨てるか」 「え……」 『華人小娘』を掴んでいた手を離す『博麗』。 重力は『華人小娘』をしっかりつかまえて、グイイと引っ張った。 カワイソーに『華人小娘』と紅美鈴は湖へまっさかさま。 「きゃああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」 ざぱーん。 水柱一つ。 「それじゃ針路はこのまま真っ直ぐね」 「根拠は?」 「カン」 「よし、いくぜ」 Stage clear 霊夢>表面装甲に損傷多数。シールドに損傷。だがトータルで見ればダメージ軽微といったところ。 格闘戦のレベルが上がった。『封魔陣』と『夢想封印』が使えるようになった。 魔理沙>表面装甲に軽微損傷多数、及び右肩背中部分貫通。第一装甲の右肩背中部分損傷軽微。まだまだ平気。 『スターダストレヴァリエ』を使えるようになった。 美鈴>湖にぷかぷか浮いてる『華人小娘』の上で撃墜された部下と救助待ち。 「ロン。リーチ一発ホンイツドラ3。隊長、ハコったらスッパですよ」 「ま、まだ千点棒が一本あるわ」 「じゃ次は速攻行きますか。中のみ直撃でハコとか大笑いですよね隊長」 「ひどいぃーー」 「ルール上問題ありません」 「ううぅ……」 ☆ カーテンが閉めきられ照明によって明るさを保っている豪華な一室。 「お嬢様、美鈴が落とされました」 「ふん。操縦技術に長けた美鈴を落とすか。なかなかやる」 「そのようです。いかが致しましょうか?」 「咲夜はまだしばらく放っておいていいわ。次はパチェが相手になるみたいだから。それより……」 「はい。紅茶のお代わりですね」 「ふふっ。咲夜は賢いな」 「感謝の極みですわ、お嬢様」 ☆ ――以下機体設定―― 紅魔館一般門番隊および一般メイド隊搭乗機 『サーヴァント』 搭載装備:ライフル マシンガン バズーカ 単分子ブレード メイドカラーで構成され、紅魔館で一般的に使われている機体。名前はメイドサーヴァントから取られている。 量産機だけに可も無く不可も無くな性能。紅魔館に配備されている機体は殆どがこれである。 配置部署に応じてマイナーチェンジや装備換装などが施されている模様。 紅魔館門番隊精鋭『ゲートキーパーズ』搭乗機 『門番』 搭載装備:アサルトライフル ショットガン 狙撃砲 単分子ブレード シールド 高い操縦技能を持つ門番隊の精鋭が搭乗する機体。外観は『サーヴァント』のマイナーチェンジ。 『サーヴァント』の物より高価な部品が一部に使われており、『サーヴァント』の三割増の性能を持っている。 性能を引き出せる搭乗者なら三倍程度まで戦果を引き上げられるとかられないとか。 副長を務めるキーパー2の機体頭部には強化された通信システムが搭載されている。 紅美鈴搭乗機 『華人小娘』 搭載装備:ヒートブレード アサルトライフル×2 グレネードランチャー ワイヤーガン シールド 全体的に緑と赤でカラーリングを施された機体。 左腕にシールドとワイヤーガン、右腕にグレネードランチャーを固定装備している。 ブレード形状は青龍刀。 関節の可動範囲が広い、動きがしなやかにしてなめらか、など、美鈴の格闘能力を活かす工夫がされている。 |