幻想郷を覆いつつある謎の妖霧。
その霧は夏の強烈な日差しから幻想郷を覆い隠し、中での弾幕ごっこを妨害する機能を持ち合わせていた。 博麗神社の巫女さん、博麗霊夢は日光を遮る妖霧をどうにかすべく、事態の解決に出かけ、変な鉄の妖怪の妨害を受けてほうほうの体で逃げてきた。 同じ頃、魔法使いの霧雨魔理沙は、霧の発生源であると思しき湖の島へ様子を見に行き、霊夢と同じく変な鉄の妖怪の妨害を受けて引き上げた。 鉄の妖怪への対抗手段を求めてやってきた古道具屋、香霖堂で二人は店主の森近霖之助から対抗手段の「鉄で出来た式みたいなもの」『博麗』、『霧雨』の二機を受け取り、再び事態の解決に乗り出した。 そして夜闇の中、神社の境内裏で霊夢が妨害を受けた鉄の妖怪――ルーミアの操縦する『宵闇』と二人は交戦。見事に雪辱を果たした。 以上、前回までのあらすじ。 ルーミアの操る『宵闇』を撃墜してしばらく。 霊夢の操る『博麗』の動作が怪しくなってきていた。 元々、ふわふわとした機動の機体なのだが、そのふわふわが、ふらふらになっていた。 さらに、時折がくっと落ちる。そしてふわふらと高度を『霧雨』と合わせる。 魔理沙が不審に思っていると、ふらふらと『博麗』が寄って来た。『霧雨』に機体を寄りかからせ、 「ねむ……」 と言って霊夢が意識を落とした。『博麗』は操縦者が意識を手離したことによって、機体コントロールの一切も手離した。 つまり、飛ぶのをやめた。 『霧雨』に引っ掛けられた『博麗』の腕が、機体の重量をダイレクトに伝える。飛行に必要な力が急に大きくなったおかげで『霧雨』はがくんと高度を落とすハメになった。 「のあっ!?」 魔理沙は慌てて高度維持に力を入れた。ついでに脱力した『博麗』を落ちないように掴む。 「むにゃ……すー……」 「人を働かせて気持ちよさそうに寝こけるな霊夢〜〜!」 魔理沙の叫びが夜に響き渡った。……でもしばらく霊夢は起きなかった。 ようやく目を覚ました寝惚け眼の霊夢とうつらうつら操縦の『博麗』を慎重にアシストしながら魔理沙は『霧雨』を着地させた。 「居眠り飛行で共倒れはごめんだぜ……」 そういうわけで二人は休息を取ることにした。 「ぁ……ふあぁ〜〜〜〜ぁ。おやすみ。あ、座席の下に毛布とか入ってたわよ。……くー……」 着地するなり霊夢は『博麗』を座らせて眠りに落ちた。毛布を引っ被り、身体を丸めて。 「相変わらず寝付きいいな」 魔理沙が座席の下を探ると、霊夢の言葉通り折りたたまれた毛布があった。他には水や乾パンなどの食料、応急処置ツールが入ったサバイバルキットもあった。 「香霖のやつ。一体何時の間にこんなものまで準備したんだ?」 袋詰にされた乾パンと氷砂糖を見つめて魔理沙。 特に空腹を覚えていなかったので魔理沙もさっさと寝ることにした。毛布を被って、帽子を顔に被せて目を閉じる。 かくして、波乱に満ちた二人の一日が終わっていった。 ☆ 太陽が昇り、霧の中にも光が入る頃に霊夢は目を覚ました。くわぁ……とあくびをして背伸びを一つ。 寝惚け眼から覚醒に至るまで数分置いて、霊夢は『博麗』の隣、『霧雨』で寝ている魔理沙を起こした。 挨拶を交わして、二人で朝食をとった。水に乾パンと氷砂糖、干し肉と典型的な保存食メニューである。 「不味くはないが、それほど美味いわけでもないな」 「何もないよりはマシでしょ。腹が減っては戦はできないってね」 ぽりぽりと乾パンを齧りながら二人は感想を交わした。 程ほどに空腹を満たしたところで二人は食事を終え、機体を起動した。 なんとなくで操縦している二人ではやらない、ちょっと突っ込んだ起動手順を機体がオートで行い、停止状態から巡航状態まで覚醒する。 『発進準備完了』 『博麗』と『霧雨』のコックピットコンソールにそう表示された。 「こっちは行けるぜ。そっちはどうだ?」 魔理沙は操縦レバーを握り、隣の霊夢に声をかけた。 「こっちも行けるわ」 返答ついでに霊夢は右手のニードルマシンガンを軽く振って見せた。 「よっし。……行くぜ!」 ふわり、と浮き上がり『博麗』は空へ舞い上がった。『霧雨』は地面を蹴って、空へ飛び上がる。 「問題の湖まではあと少しね」 霧の中を紅白と黒白の機体が駆けていった。 ☆ 『博麗』と『霧雨』の二機は順調に飛行を続け、湖上空に入った。 遠距離がよく見えない程度の濃霧が湖を覆っている。 ――だが、二人には関係なかった。 『博麗』と『霧雨』に搭載されたセンサー等の機器が霧を透過して、通常と変わらない視界をコックピットの二人に提供しているためだ。 朝靄と妖霧の中を飛んでいた二人だが、ふと妙な物に気付いた。 機体の速度を落とし、ゆっくりと進む。 二人の進行方向から機体の握り拳程度の大きさのコンペイトウのような形をした金属球がふわふわ飛んで、いや、流れてくるのだ。 一つ二つではない。相当な数がふわふわと漂ってくる。 「? 何かしらこれ?」 霊夢は機体の手を伸ばし、鉄のコンペイトウを叩いた。 瞬間。 コンペイトウが爆発した。 爆風と爆炎、コンペイトウの破片の混じったものが、周囲に飛び散る。 「霊夢!」 魔理沙が叫ぶ。 「あ、あー……びっくりした」 晴れていく爆煙の中に少々煤のついた無傷の『博麗』が浮かびあがった。 「大丈夫か?」 「うん。盾で突っついたから助かったわ」 霊夢は左腕に装備されたシールドの外側で、ノックするようにコンペイトウを叩いたのだ。それが幸いして本体に爆発の影響が及ばなかった。 殆ど身代わりに爆発を受けたシールドは、煤けてはいたものの、意外なほどに傷が無かった。 「これ、一体何で出来てるんだ?」 「さあね。それよりコレ、どうしようか?」 漂ってくるコンペイトウの危険性は霊夢が身を持って実証してみせた。シールド越しに爆発させるならまだしも、まともにくらったらダメージ必至だろう。 「かわして行くのが一番楽だと思うぜ」 「それもそうね」 一言で解決した。弾幕ごっこは当たらないように立ち回るものだ。 コンペイトウが密集しているところをかわして二人は進路を取った。 紅白と黒白が危うげなく湖を飛んでいく。 コンペイトウ地帯を抜けて間もなく、二人の機体コンソールが『未確認機接近』の警告音を鳴らした。 「お客さんか?」 「そうみたいね。前から何か来るわよ」 『博麗』、『霧雨』の正面から、青い胴体に水色の頭部の機体が高速で接近。 ロングレンジからミドルレンジまで距離を詰めて未確認機は空中に静止した。 「もう二度と陸には上がらせないよ!」 未確認機の操縦者が元気一杯に叫んだ。 搭乗者の名前はチルノ。搭乗機を『氷雨』という。 「おおぅ、見覚えのあるヤツが出たぜ」 言って魔理沙は『霧雨』を一歩前に出した。 「? 誰よアンタ?」 怪訝な声を出すチルノ。 「お前に昨日の昼頃にボッコンスッカン撃たれた魔法使いだぜ」 「…………いたっけかなそんなの」 「忘れるなスポンジ頭」 「んなっ!? こいつ! バカにすんなぁ!」 「おおぅ。スポンジ頭が悪口だってことぐらいはわかるんだな。バカっぽいのに」 「……っきぃーーー!! ふざけやがってえええ!! あんたなんか凍結粉砕みたいに粉々にしてやるわ!!」 激昂して右脚部に取り付けたショットガンを抜き放つ『氷雨』。 「霊夢、手を出すなよ。こいつは私がやるぜ!」 霊夢の返事を待たずに魔理沙は『霧雨』をスタートさせた。 『霧雨』vs『氷雨』 いざいざ、戦闘開始。 ☆ 『氷雨』は突っ込んでくる『霧雨』にショットガンを向けてぶっ放した。 同時にセミオートの排莢装填機構が動き、炸裂したショットシェルを排出して次弾を薬室に送り込む。 『霧雨』へ大粒散弾が迫る。 「甘いぜ!」 『霧雨』は急加速して大きく右へ移動。散弾をかわす。 「このぉ!」 回避機動を取る『霧雨』に照準して再び発砲。しかし『霧雨』はタイミングを読んで逆進、再び回避。 「ぐぬ!」 「ほれほれどうしたスポンジ頭、カスりもしないぜ?」 「スポンジって言うなあ!」 怒髪天恋娘の操縦に従って三度ショットガンをぶっ放す『氷雨』。 再三飛来する散弾を、魔理沙は『霧雨』に急上昇をかけてかわした。 「狙いが甘いぜ」 回避機動を目で追う『氷雨』に『霧雨』はミニミサイルマシンガンを向けた。 「今度はこっちの番だ!」 魔理沙の操縦に従い、『霧雨』は腰だめにマシンガンを撃つ。マシンガン弾サイズまで小型縮小化されたミサイルがフルオートで『氷雨』に降り注いだ。 「うわあああ!!」 チルノは反射的に『氷雨』の両腕をクロスさせて防御体勢を取った。ミニミサイルが次々に着弾して爆発、『氷雨』を痛めつける。 「あああっ!!」 防御体勢のまま『氷雨』は全速で後退。ミニミサイルの弾幕から逃れた。 開幕から数秒で表面装甲には焦げ目と歪みが生じている。 「こ、このぉお……!」 いきなり痛めつけられ、涙を浮かばせるチルノ。 「はっはー。どうしたどうしたもうギブアップか?」 銃撃を止めて余裕綽々に肩をすくめてみせる魔理沙操る『霧雨』。 「ふっ、ふっ……!」 ぐずっと鼻と涙をすすり上げて、 「ふっざけんなあ!!!」 怒号一発。 『氷雨』は左脚部にマウントされたビームライフルを抜いた。『霧雨』に向けて撃つ。 装甲にこそダメージの跡が見えるが、中身は健在なようで実に滑らかに動いて見せた。 『霧雨』は『氷雨』から最速で放たれたビームを、宙を蹴って軽く左へステップしてかわす。 「よけるなあっ!!」 スラスターを噴かして接近しながら立て続けに二連射。 『霧雨』はもうワンステップ踏んで、一射目を右に抜けさせ、二射目は急上昇でかわした。 「くのっ! くのっ!」 ショットガンを連射しながらさらに接近する『氷雨』。 『霧雨』は右に左に回避行動を取りつつ『氷雨』との距離を測り、 「よっと!」 ショットガンが再装填で沈黙する一瞬を突いて『氷雨』の真上を飛び越えてすれ違った。 「なっ!? あ! 後ろ!」 大慌てで機体を振り向かせるチルノ。そして目にしたものは「はっはー」とばかりに余裕綽々の『霧雨』だった。 「戦い方がいっぱいっぱいだな。それじゃ私は落とせないぜ」 「魔理沙ーあんたも調子乗れるほどの時間乗ってるわけじゃないでしょー」 調子にノリまくりの魔理沙に霊夢からの野次が飛ぶ。「はっはっはー」と笑う魔理沙。 そして遂にキレるチルノ。 「――――」 がじゃごがじゃご、という物々しい音を立てて、『氷雨』両肩部背後にマウントされた樽状の部分がせり上がる。 「お?」 怪訝そうにそれを見る魔理沙。 『氷雨』の目に当たる部分が鋭く光った。 「くっらっええーーーーーっっ!!!」 『氷雨』のせり上がった部分からあのコンペイトウが、雨あられと無数に高速でばら撒かれて『霧雨』を包囲する。 調子に乗っていた魔理沙もこれには少しビビッた。 「っと!」 包囲弾幕気味に高速で射出されるコンペイトウを弾幕ごっこの要領でかわす『霧雨』。 「くらえ、ったってこんなものじゃ当たれないぜぁっ!?」 ぜ。と続けようとした魔理沙だったが、突然の至近距離爆発に乱された。 横を通り抜けると計算したコンペイトウがその場で停滞。それに気付かずに魔理沙は回避機動を取り、コンペイトウに接触したのだ。 爆発の衝撃と爆風に煽られて傾ぐ『霧雨』。 「あっつ……」 『霧雨』は右椀部に被爆、表面装甲に損傷。ダメージは軽微といったところか。 「見たかっ!! 必殺『パーフェクトフリーズ』っ!!!」 うははははっ、とばかりに喜びのポーズを取る『氷雨』と中のチルノ。 「っの……やりやがったなコンチクショウ!」 『霧雨』はミニサイルマシンガンを構えた。お返しとばかりに『氷雨』に向かって発砲する。 ばららららら、とばら撒かれたミニミサイルは『氷雨』に届くことなく、コンペイトウ包囲網に遮られた。ミニミサイルはコンペイトウの爆発に巻き込まれて誘爆を起こし、その役目を終える。 「むだむだむだぁっ! 当たれえ!」 『氷雨』はさらにコンペイトウを注ぎ足しながらビームライフルを構えた。 コンペイトウの包囲に行動範囲を狭められつつある『霧雨』を狙い撃つ。 コンペイトウを焼き潰し、立て続けにビームが飛ぶ。 「くっ! なめる、なっ!」 『霧雨』は最小限の動きで辛くもかわす。かわしながら撃ち返すが『氷雨』への命中弾が出ない。コンペイトウに阻まれる。 武器の性能差が出ていた。 『霧雨』のミニミサイルマシンガンは連射性ではビームライフルを上回るが、一発当たりの威力で言えば劣る。 対する『氷雨』のビームライフルは連射性で劣る反面、一発の威力と貫通力で勝る。 つまり、コンペイトウに当たって炸裂するミニミサイルでは包囲網を貫通できないが、コンペイトウを物ともしないビームは包囲網を貫いて攻撃できる。 「くっ! うおっ!」 紙一重でビームをかわすがコンペイトウに接触、爆発。 爆圧に押し出される『霧雨』。その先にはコンペイトウの陣。 咄嗟にシールドを前面にして堪えるものの、接触。そして爆発。 『霧雨』はジリジリと追い詰められていた。 「全く。調子に乗ってるからよ」 観戦モードでその光景を眺めていた霊夢が不意に言った。 「く……おっと! 今、耳は休憩中だぜ」 「あ、まだ減らず口叩く余裕はあるんだ」 感心感心、と一人ごちる霊夢。 「危ないんなら手を貸そうか?」 「はっ。ご冗談を」 言うそばから『霧雨』、コンペイトウに接触。損傷軽微。さすが『霧雨』だ。なんともないぜ。 「アイツは私の獲物だぜ」 「私には魔理沙が獲物になってるように見えるんだけど」 「窮鼠猫を噛むってやつだ」 「魔理沙が鼠?」 「いや」 『霧雨』が武器を変更。ミニミサイルマシンガンからレーザーライフルへ。 「アイツが鼠で私が猫だ」 シールドを前に、半身になってレーザーライフルを構え、狙いをつける。 ビームが機体をかすめる。かすめただけでダメージはない。 「その心は?」 レーザーライフルの照準が『氷雨』を捉える。 「追い詰めるのは私だ」 レーザーが放たれた。 一言で言って、チルノは調子に乗っていた。 黒白の攻撃は『パーフェクトフリーズ』を抜けてこない。この状態が続く限り絶対に負けない。 あとはビームライフルを撃っていればそのうち命中するし、あるいは操縦を誤って包囲陣に突っ込んで爆沈する。 「くっくっく……。舐めると舌をヤケドするのよ」 そんな風に調子に乗っていたチルノだから、 「……え?」 包囲陣を貫通してきたレーザーに反応し損ねた。 「っきゃあああああああ!!!!」 『霧雨』のレーザーは『氷雨』の右肩部を直撃。右肩をぶち抜いて、腕を千切り飛ばし、さらに後ろにあった『パーフェクトフリーズ』撒布装置に命中。 レーザーの直撃を受けて、安全装置が誤作動。撒布装置を切り離す。ご丁寧に左右両方。 「え!? あっ! ……や、やば……っ」 状況を理解して冷や汗を流すチルノ。 「コンペイトウのお代わりがなくなったってことはさ……」 レーザーライフルを格納して、ショットガンに持ち替える『霧雨』。 「後は目の前のを潰せば自由ってことだよなぁ!」 ひっ、と息を飲んで、『氷雨』はビームライフルを撃つ。 皮肉にもそれは『霧雨』をコンペイトウの籠から解き放つ手助けをしていた。 コンペイトウを焼き潰したビームを『霧雨』はグレイズさせつつかわして、ショットガンをコッキングした。 『霧雨』は立て続けに三発撃ち、ビームを逃れた進路上のコンペイトウを排除。――――進路、クリア。発進どうぞ。 威圧するように目を光らせて、『霧雨』は『氷雨』に突撃する。 チルノは健気にも反撃する勇気を見せた。 装甲に焦げ目と歪みを作り、右腕を失った『氷雨』がビームライフルを連発する。 「当たれ当たれ当たってーーー!!」 半泣き声で叫ぶチルノ。 だが、直線的な射撃に対しての回避は高速型の魔理沙の得意とするところだ。『霧雨』に乗っていてもそれは変わらない。 『霧雨』は『氷雨』に向かいながらたやすくビームをかわす。かわしながらショットガンで牽制射を食らわす。 散弾が『氷雨』を叩いた。チルノが上手く防御しなかったためにビームライフルが散弾を受けて『氷雨』の手から弾け飛ぶ。 「……くしょう。こんちっくしょお! なめんなあ!!」 『氷雨』は左の拳を固め、背部の妖精の羽に似たパーツをきらめかせた。拳を大きく振り被って、『霧雨』に突っ込む。 やぶれかぶれの突撃に魔理沙は容赦なくショットガンで答えた。 ばん! じゃぎご。 「ぶげっ!!」 一発目は頭部に叩き込んだ。カウンターパンチを叩き込まれたボクサーの様に仰け反る『氷雨』。 ばん! じゃぎご。 「ほげっ!!」 二発目も同様に頭部に撃ち込んだ。グロッキー状態にトドメの一撃よろしく浴びて、引っくり返る『氷雨』。 操縦者であるチルノが意識を失ったのか、『氷雨』はまっさかさまに湖に向かって落ちていき、盛大な水柱を立てた。 ばん! じゃぎご。 三発目。湖面にぷかぷか浮いていた『氷雨』に追撃駄目押しとばかりに撃ち込んだ。 装甲に亀裂が入り、そこから湖水が流れ込んでいき……『氷雨』は湖に没していった。 ☆ 「随分梃子摺ってたわね」 ニヤニヤと霊夢は言った。 「そんなことないぜ。ちょっとした余興ってヤツだ」 「本当かしら」 「さあ。どうだろうな」 嘯くように言う魔理沙。 ――実際のところ、本当にまだ余興の範囲だった。 魔理沙は密かに逐次機体状況をチェックし、どの程度まで耐えられるのか、どのぐらいの性能を引き出せるのか測っていたのだ。操縦技能の向上と、習熟も兼ねて。 「ああ、なんだか冷えてきたような気がするわね。冷房病になっちゃうわ」 「なら早いところお茶でも出してくれるお屋敷探そうぜ」 Stage clear 霊夢>ほぼ無傷のまま先へ進む。少々退屈気味? 魔理沙>派手に爆発を浴びていた割に損傷は軽微。さすが『霧雨』だ、なんともないぜ。霊夢とのレベル差が縮まった。 チルノ>一時間後気絶より復帰。決死の覚悟で湖底に各坐した機体より脱出を図り、見事おぼれる ☆ 「隊長、湖外周部配備の『氷雨』がロストしました」 「ああ、やっぱり。”気”が消えたからそうじゃないかなって思ってたのよね」 「どうしましょうか隊長」 「巡回隊、及び遊撃隊に通達して。『敵機襲来』って。……ああ、それから『ゲートキーパーズ』も全員出れるように集合掛けておいて」 「了解しました。では失礼します」 「……全く。お馬鹿なんだからあの娘は……」 ☆ ――以下機体設定―― チルノ搭乗機 『氷雨』 搭載装備:ショットガン ビームライフル 浮遊機雷射出装置×2 全体的に水色と青で構成された機体。 紅魔館門番の紅美鈴が湖外周の防衛強化に与えた。 バックパックに浮遊機雷射出装置が装備されていて、両肩部から発射する。防衛戦や撤退戦での時間稼ぎに効果を発揮する。 紅美鈴は敵が来たら自分に連絡して、あとは防衛戦をするように言ってあったが、おてんばチルノはそんなことすっかり忘れていた。 |