母親譲りの百合っけのせいで子供の頃からセクハラめいた悪戯ばかりしている。
 今日も朝っぱらから「おっはよーメリー」とメリーを背後から強襲して胸に触った。というか揉んだ。揉みしだいた。
「ふにゅもにゅ。今日もいい感触してるわぁ」と正直な感想が思わず出た。にゃー、たまらんわぁこのマシュマロのような弾力。
 数秒ばかりメリーのおっぱいを堪能していたら、「蓮子ったらお茶目さんなんだから」と言うが早いかメリーの手がわたしをとっ掴まえて背負うようにブン投げた。
 ぱ〜ら〜ぱらぱらぱ〜ら〜♪と古典の部類に入るSF映画のフレーズを幻聴しながらわたしは帽子を押さえて受身を取った。下はしっかりと舗装された道路だけど大丈夫。二階から蹴り落とされても受身さえとれば大丈夫って島袋さんがゆってた。通信教育で覚えた受身も一年以上連日ブン投げられれば堂に入ってくる。今日もしっかりと衝撃を逃がしてダメージを抑えることに成功した。
「おはよう蓮子。今日もいい天気ね」と右手を差し伸べてくる金髪のメリー。わたしはその手をしっかり掴んで起き上がった。
「おはようメリー。今日もいいおっぱいね」と言いざまにわたしはもう一方の手を伸ばして真っ向からメリーの胸を掴まえた。後ろから掬い上げるようにして揉むのとはまた違った感触が手先からやってくる。ん〜、マンダム。むにゅむにゅと衣服越しにメリーのおっぱいを弄んでいると、メリーはペティっているわたしの手を引き剥がしておもむろに曲がってはいけない方向に捻った。指先から伝わってくる感触に神経を集中していたところへ、メリーの逆関節はスタンガン宜しく電撃をぶち込んできた。
「折れる折れる痛い痛いぎぶぎぶメリーメリー極まってるから極まってるから」
 痛い痛いめちゃくちゃ痛い。どのくらい痛いかっていうとちょっと泣いちゃうぐらい痛い。そりゃもう痛さのあまり空いてる手がメリーをぶん殴りそうになっちゃうのも無理ないぐらいに痛い。だけどメリーをぶん殴るぐらいならこのまま腕をへし折られた方がマシなのでわたしはぶんぶんと手を振ってその衝動を空気へぶつける。「痛いですよ痛いですよ極まってますよ」加減もアピールできるのでちょうどいいかもしれない。
 しかしながらメリーはさらにくくっと巧みに折れちゃう直前まで捻ってくるのだ。容赦なく。わたしが謝んないから。
「ごめんメリーマジごめんホントごめん謝るから手離してごめん泣いちゃうぐらい痛いからごめんメリーごめん」
 ガマンしきれなくなったところでメリーに謝り、苦行の時間に終止符を打った。わたしが涙目になるまで極めて、メリーは手を離した。「はぉぉぉ……」と捻られた腕を押さえて呻くわたし。痛みを紛らわすために今日のメリーを思い出す。
「ぁあぁ、でもこの痛みと引き換えにあの感触を堪能できるなら安いものよねぇぇ……」
 口からぽろっと本音が出ちゃった。
 メリーは溜息交じりに苦笑してわたしの肩を叩いて「行こう蓮子。遅刻しちゃうわよ」と促した。関節を極めた腕じゃない方の肩を叩いてくれるあたりメリーは優しいと思う。
 だからついついやっちゃうのよねえ……。


 男の子より女の子を好むせいで子供の頃から女の子へ悪戯ばかりしている。
 今日も昼休みになるが早いかメリーの背後へ忍び寄り「昼休みよメリー」とスカートをめくりあげた。スカートがふわあっとめくれ上がって禁断の花園を覗かせるこの僅かな時間がまた至福で眼福なのだ。わたしは鷹の目の動体視力を駆使して今日のぱんつとおしりとふとももを余すことなく目に焼き付ける。めくれあがったスカートが重力を思い出して帳を下ろすまでメリーの脚のつけねから足首までを眺めて感想を述べる。
「うむうむ、今日は縞パンかぁ」とわたし。
「スカートめくりなんて、今時流行らないわよ蓮子」とメリー。
 スカートをめくられた直後とは思えないクールな声に聞き惚れるわたしへ、メリーは振り返りざまにフルネルソンをかけた。
 気づいたときにはきっちり決まっているあたりメリーは組み技の天才だと思う。抵抗する間もありゃあしない。本職のプロレスラーだって、こうも鮮やかには掛けられまい。
「痛い痛いぎぶぎぶメリーメリー肩外れちゃう肩外れちゃう」
 じたじたと暴れる、と見せかけて。背中を押し付けて“たゆたゆふよん”のクッションを堪能する。あー、痛気持ちいい。「大丈夫よ、すぐにはめてあげる」
 知ってか知らずかメリーは技を解こうとしない。それどころかさらに絞め付けてくる。メリーは変なところが抜けてるから、多分気づいてない。気づいてないとは思うけどさらに気づかれないように、抵抗してるのよーと口でアピール。
「それ大丈夫じゃないから大丈夫じゃないから。ごめんなさい謝るからやめて外してあああ外さないでそういう意味じゃなくてああああ、ひぎぃ!」
 あ、今日もおっぱいに我を忘れちゃった。
 だらんと垂れる私の腕。
「痛いよー、痛いよー」演技じゃなく素で痛い。フツーに痛い。つーか泣きそう。
「大丈夫よ。今はめてあげる」と言ってメリーは私の肩をはめた。ごきぽきとかイヤンな音を立てて両腕が復活する。メリー上手すぎ。壊すのも直すのも。近所の柔道整体の接骨院より上手い。多分。しかしながら腕が外れればやっぱり痛いわけで。
「うー……ぁ痛いー……」と両肩を押さえる。
 だけどまあ、こんなコスト。リターンに比べれば、ねぇ。
「ぁあぁ、でもこの痛みと引き換えにぱんつとあんよと背中におっぱいが堪能できるのなら安いものよねぇぇ……」
 あ。また本音出ちゃった。


 母親譲りの百合っけのせいで子供の頃からセクハラめいた悪戯ばかりしている。
 今日も授業が終わるが早いか「放課後よメリー」と席を立ったばかりのメリーのおしりへ手を伸ばした。座りっぱなしで血行が悪くなってるであろーおしりをむにむにと揉んで血行を促進してあげる。ついでにその仕上がり加減を堪能する。
「んー、ほどよい硬さと柔らかさのハーモニーが見事なお尻だわぁ」ぽろっと口から感想がもれたのを聞くが早いか、
「蓮子ったらお尻はやめてって言ったでしょ」とメリーはわたしの手を掴んでぐりょっと後ろ手に捻り上げた。あだだだだ。
「折れる折れるメリーメリー痛い痛いぎぶぎぶ」
 メリーを殴って振りほどこうとする手で身体を叩いて衝動発散ついでにタップするわたし。
「下手に動くと折れるわよー」とメリーは囁いて、わたしの背を押した。ぞくん、と背筋に電気が流れる。わたしはメリーに促されるまま歩き続け、部室へ連行された。メリーはわたしをの関節を決めたまま器用に片手で部室の鍵とドアを開け、中に入ってドアと鍵を閉めた。わたしとメリーの二人しかいないサークルの部室には、わたしが別荘代わりにするべく名分つけて持ち込んだベッドが置かれている。
 ベッドが視界に入った瞬間、細い手指が身体を這っていく感覚がフラッシュバックした。無意識に、脚の付け根にきゅっと力が入る。メリーに腕を捻られていなかったら、声が出ちゃったかもしれない。
「メリーメリー腕痛い腕痛い限界限界」
「はいはい。今離してあげるわよ」
 メリーはおざなりに言ってわたしを優しくベッドへ押し倒した。拘束が解かれ腕が自由を取り戻す。もっとも。今度は別の拘束で動けないんだけど。
「うー……」とシーツに顔を埋めて呻く。顔が赤くなっていくのが分かる。何か言わないと。頭がオーバーヒートしちゃう。
「ぁあぁ、でもこの痛みと引き換えにメリーに可愛がってもらえるなら安いものよねぇぇ……」
 ……本音出ちゃった。このクセ、なんとかしないとなあ。
「素直に言えばいいじゃない」
 きしり、とベッドを軋ませ、メリーが耳元で囁く。甘い声にわたしの肌が粟立ち、身体の奥が熱くなる。
「なんか癪なんだもの」
 普段攻めのわたしが実はネコなのとか……しかもそれがクセになっちゃったのとか。素直に言うの、癪じゃない……。







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