「ここは図書館。死人に口無し」





「――妹様のやんちゃで隊が壊滅状態に陥りました」
 ブーメランマークの描かれたエプロンをつけたメイドは無表情にそう言った。


 ――チタンあるみナイド一番機、kt-21ぷれぜんつ――


 紅魔館地下大図書館にやってきて、十六夜咲夜はこう言った。
「妹様のメイド隊が壊滅しちゃったの。代打をお願いするわ」
 お願いするわ、と言いながら実際のところは命令である。


「そういうわけですから、しばらくの間よろしくお願いします。妹様」
 ――小悪魔三姉妹が長女、パチュリー様の世話と司書仕事ならお任せください『小悪魔こぁ』

「んじゃ、よろしくお願いします。妹様」
 ――小悪魔三姉妹が次女、トラップワークに策略、イタズラならお任せよん『子悪魔ここぁ』

「あー、よろしくお願いするこぁ。妹様」
 ――小悪魔三姉妹が三女、力仕事と荒事なら任しとけ、でもニンジンだけは勘弁な『小悪魔さーど』

「よーろしーくねー」
 ――悪魔の妹、きゅっとしてドカーンな幻想郷無双『フランドール・スカーレット』



「――いけませんねフランドール様、お仕置きです」

 オイタが過ぎたフランドールに仕置き仕るべく、小悪魔三姉妹が悪魔の妹に決闘を吹っ掛けた。

「止めないの。咲夜、レミィ?」
「やりすぎた主を諌めるのも従者の仕事ですわパチュリー様」
「この長雨の退屈を紛らわすにはいい見世物だよパチェ」



「ヴワル魔法図書館司書奥義、『悪魔の魚』。この技から逃れられるとお思いですか」
 こぁが使うは異質な技。絡まる腕が自由を奪う。

「古来より金だらいはそう使うって相場が決まってるのよ妹様」
 ここぁが落とすは金だらい。頭を叩かれ星が散る。

「こぉーあっ!」
 さーどの両手にはガントレット。振るうは常軌を逸した大剣、ドラゴン殺し。

「レーヴァテイン、いくよー」
 フランドールの手には炎を纏った黒杖。振るうは煉獄の体現、レーヴァテイン。


「三人がかりなんてフェアじゃないよね。だから私も四人がかり。アンフェアかな?」
「卑怯かな?」
「卑怯なとき?」
「卑怯であれ?」


「ここは私たちの領域、図書館なんですよ」
「決闘とあらば勝つためにあらゆる手ぇ打つのは当然の仕儀ってね」
「――小悪魔さーどよりこぁ姉、ここぁ姉へ。『獲物は網に掛かった』。繰り返すこぁ。『獲物は網に掛かった』こぁ」


「パチェ、止めなくていいの?」
「どうしてかしら、レミィ」
「さーどはともかく、フラン相手にこぁとここぁは力不足だと思うんだ」
「レミィにこの言葉を送るわ」
「どんな言葉?」
「『モビルスーツの性能の違いが戦力の決定的差ではないということを教えてやる!』」
「いい声ね、パチェ」


 はたして、三人の小悪魔は、フランドールに勝てるのか。
 そして、その後にあるものは――。


「楽しい楽しい楽しい! ふぁいやー!」
「レーヴァテイン振り回すなこぁーー! ちょっ、うわーっ! あぢ! あぢぢぢぢ!
 お、おしり焦げるこぁーー!」


 紅魔館地下大図書館は今日も平和です。

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